井の頭公園やその周辺の樹林地では、たくさんの命が輝いています。様々な命を育む樹林は人にも多くの恩恵をもたらしてくれます。 多くの年月と人々の努力によって作られ守られてきたこの素晴らしい環境を大切にしていきたいものです。
万助橋近くで、3羽の幼鳥にエサを運ぶ親鳥
七井橋近くで、幼鳥にエサをせがまれる親鳥
井の頭自然文化園の脇の八丁通りで、エサとなる虫がいる場所を親鳥に教えてもらっている幼鳥がいました。(3羽いました)
日が長くなり、緑が日に日に濃くなる6月。井の頭公園の周辺には鳥たちの声が充満しています。ツバメ、カラス、スズメ、ムクドリ、ハト、コゲラなどの家族を見かける機会も多いのではないでしょうか。
たとえば、市街地にも適応しているシジュウカラは日頃よく出会える鳥だと思います。毎年、5月から6月にかけて、親鳥が、低い木、草の茂み、高い木と忙しく飛び回り、虫を捕まえ、巣立ち後の幼鳥に与える姿が見られます。季節が進むにつれて、成長した幼鳥が自分でも虫を捕まえるようになってきます。
シジュウカラは1日に数百匹もの虫を食べ、その数は1年で10万匹とも12万匹とも言われています。(2014年3月の日経新聞の記事によると「シジュウカラ1羽が1年間に食べる虫の量をガの幼虫に換算すると、12万5千匹になる」というデータがあるようです) もし、シジュウカラが虫を捕まえないと、虫が増えすぎ、その結果、市街地の街路樹や庭の草木は、虫に食べられてしまう量が適切な量を超えてしまうかもしれません。
この季節、虫たちの活動も活発になり、樹林地でもチョウやトンボなどの姿も多く見られます。虫たちも、草・木・実など植物や、さらに小さなまたは大きな他の生き物を食べながら幼虫から蛹、成虫と育っていきます。その虫たちの命も、鳥など他の生き物の命に繋がれていきます。自然界では一種の生き物だけが単独で繁栄することは少なく、生き物たちは進化の過程でお互いうまくバランスをとりながら命を繋いできたようです。
子どもたちを連れて、木々から道路、屋根、草むらと動き回るシジュウカラ。ジュクジュク、チチチチ、ツピーツピーと多彩な鳴き声です。シジュウカラが語彙や文法を持つという研究は多くのメディアで紹介され有名になりましたが、親鳥に率られて色々な場所を動き回ることで、シジュウカラの子どもたちは言葉を学んでいるように見えます。
野鳥たちは、子どものうちに、水を飲める場所、食べ物を見つけやすい場所や隠れる場所などを学んでおかなければなりません。巣立った場所を離れても、また戻ってきたときに、生活にとって大切な場所を覚えているはずです。わたしたち人間が勝手に樹木や草地などを開発し、水や家の材料や場所を奪ってしまったら、戻ってきた鳥たちはどんなにがっかりして困ることでしょう。
野鳥や虫などの生き物たちの生きる場でもある樹林地は、これからの酷暑の季節に木陰を生み出し、空気を冷やしてくれるなど、人の生活にも大きな潤いをもたらしてくれます。