樹木を守ること

木々の間で囀るメジロ

なぜいまある樹木を守ることが大切なのでしょうか

長い時間をかけて育った何種類もの高木や大木は、独自の環境を形成します。木々は、野鳥や昆虫をはじめとする小動物に住処や食物を提供し、獲物を探す場所、敵や悪天候から身を守る場所、休憩する場所にもなっています。何本もの樹木が塊となり森を作ることで、樹木同士がお互いのネットワークを作り守りあっていることも近年の研究でわかってきました。さまざまな種や大きさの樹木が存在することで、生き物の棲み分けもできています。生き物により食べるものや好む高さなどの環境も違うからです。十分な自然環境調査を行わないまま単に樹木を伐採することで繊細なエコシステムは壊れてしまい、生き物たちに大きなダメージをもたらしかねません。

いまある樹木がもたらす恵み

武蔵野の木々は人々と生き物に多くの生態系サービスを提供しています。 

夜木の上で眠るカワウ

動物たちへの恵み

木々は動物たちにとって不可欠の存在です。樹木に巣を作り子育てをする鳥は多く、成鳥も夜は木の枝で夜を明かします。悪天候や外敵から身を守る場所でもあります。木々の実や樹液は鳥たちや虫たちの食料になります。鳥たちはたった一箇所の林では暮らしていけません。それぞれに縄張りがあり、一箇所の食べ物を食べ尽くすと再生産される前に資源が枯渇してしまうことを知っています。また一箇所だけにいると外敵にも狙われやすくなります。同じ鳥の種でも縄張りがあり、他の家族がいる木に暮らすことは難しく、数カ所の分散した場所が必要です。

環境を整える役割

木々は酸素を提供し、二酸化炭素を固定し、湿度や温度を適当なものに調整しています。木々の落ち葉は都市の暮らしでは面倒な掃除を必要とすることもありますが、落ち葉があってこ土壌が豊かに保たれ、落ち葉に隠れて暮らす生き物、落ち葉を分解して生きる生き物を助け、その結果土壌を豊かに保ってくれます。落ち葉の保水力のおかげで、大雨によって表皮の栄養分が流れ出すことや水が勢いよく流れ出して洪水の原因要素を減らす役割も果たしています。

木の枝で作った秘密基地?

人びとへの直接の恵み

木々は人々に精神的な安らぎを与えてくれます。2022年の歌会始では皇后さまは吹上御所の大樹をお読みになりました。緑のある空間にいる心地よさは多くの人が知っています。暑い夏には木陰を提供し、その木陰から移動してくる涼しい風を受けられます。また、冬の寒さを和らげます。木の実を使ってリースを作ったり、どんぐり遊びをしたり、木の実を直接食べることもできます。井の頭公園にもある栃の木などの美味しい蜂蜜を生み出す花を咲かせる木もあります。木々が作り出す季節感のある景色も人々を楽しませます。お花見や紅葉狩りは多くの人にとって大切な楽しみになっています。