武蔵野の自然

ギンブナと落ち葉 2022年12月

動物と植物には、深い関係があるようです。むかしは自然に土に帰っていた落ち葉。なかなか気づかない重要な役割を担ってくれているようです。

ギンブナの大発生


今年(2022年)の秋、井の頭公園の七井橋近くでギンブナの若魚の大集合がありました。たくさんのお魚が水面から見やすいところにぎゅうぎゅうに集まっている様子は壮観でした。これまでにみられなかった光景に、公園散歩を日課にする人たちの間では様々な理由が推測されていました。


公園の案内板には「はっきりした理由は不明ながら、カワウの捕食から避難しているとも考えられる」というように書いてありました。実際、カワウだけでなく、アオサギ、コサギ、カモたちが次々に食事にやってきます。時折大きなナマズがやってきて、大きな口でギンブナを飲み込んでいました。魚たちは食べられて次第に数を減らし、12月に入るとこの場所にほとんど見られなくなってしまいました。


ギンブナたちが集まっていた場所は、池の端の浅瀬になっている水草の近くで、落ち葉が水面下にたくさん層になり、水面にも浮かんでいました。ギンブナが落ち葉に隠れる様子も見られたので、この場所は、小さな魚にとっての隠れ家になっていたのかもしれません。


落ち葉

落ち葉は、多くの生き物たちにとって大切な環境を作ります。もともと自然界で、落ち葉は生命の循環を助けてきました。鳥、昆虫、爬虫類、両生類などの隠れ家や越冬の場になるだけでなく、落ち葉に集まる菌や微生物を昆虫が食べ、それをより大きな動物が食べるという食物連鎖のステージになっています。

雨が降ると濡れ落ち葉に蓄えられた栄養分からポリフェノールのタンニンがしみ出て、川へ流れ出し、川の健康を保つと言われています。タンニンは土中の鉄分と結びついてタンニン鉄という物質になり動植物が吸収できるようになるそうです。

濡れ落ち葉という言葉には物悲しいイメージもつきまといますが、落ち葉はこれまでの命を終えるときに蓄えた栄養を使って他の命を養うという、大切な役割を果たしてくれているのです。木々の種類によって水底に堆積するまでの速度や分解の速度が違うため、多様な樹種がある方が生きものにとって豊かな生態系を作り出すと言えるでしょう。


アスファルトの上などに落ちた葉は、土にすむ微生物や小動物に出会えないので、分解されず、乾くと風で舞い散ります。一方、土の上の落ち葉は徐々に細かくなり、姿を消していきます。

住宅地や商業地では、落ち葉はトラブルの元になったり、都市部ではゴミとして扱われたりもしていますが、せめて自然を楽しめる公園の中では、落ち葉の役割や価値を見直していきたいですね



冬の間、水鳥たちが落ち葉の上を歩いて木の実を探し出して食べる様子が見られます。地面やアスファルトの上に落ちた実はすぐになくなってしまいますが、落ち葉の下に隠れた実は、食べ物が少なくなる長い冬の間、動物たちが手に入れられる重要な食料です。